中小企業新事業進出促進補助金
2025年より「中小企業新事業進出促進補助金」という補助金が新たに始まりました。中小企業新事業進出促進補助金(以下、「新事業進出補助金」と表記します)は、事業再構築補助金という補助金の後継制度ですが、共通点もあれば相違点もあります。それを踏まえてこの投稿では、新事業進出補助金の概要と、社労士が取り扱う「一般事業主行動計画」との関係についてご説明します。
Ⅰ.中小企業新事業進出促進補助金
1.目的
中小企業新事業進出促進補助金とは、国が、中小企業等による既存事業とは異なる事業への挑戦を後押しすることにより、これらの企業が規模の拡大や付加価値向上を通じ、生産性向上や賃上げを行うようになることを目的としたものです。
2.対象企業
この補助金を申請できるのは、主に中小企業です。中小企業であるかどうかは、資本金や常勤の従業員数により判定されます。業種により数字は異なりますが、もし貴社が資本金5,000万円以下、または従業員数50人以下であれば中小企業と考えて差し支えありません。
詳しくは述べませんが、中小企業以外でも申請できる場合もあります。
3.補助の対象外となる企業
ただし、中小企業であっても申請ができない場合があります。代表的な例をいくつか挙げます。
・事業再構築補助金やものづくり補助金に採択されたり、それらの補助金にかかる事業を実施中であったりするとき
・従業員がいないとき
・企業の設立から1年が経っていないとき
4.補助の対象となる経費
次のような支出であれば、補助金が支給されます。
機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、
外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費
なお、対象はあくまで「新事業へ進出するための費用」です(簡潔に表現すると、設備投資や体制作りのためのお金ということです)。そのため、新事業へ進出した後の、商品や原材料の仕入れ代金等は対象となりませんのでお気をつけください。
5.補助金額および補助率

上の表は新事業進出補助金の公募要領からの抜粋です。ご覧の通り、従業員数により補助金額は異なりますが、補助率は規模にかかわらず一定です。
なお、補助金額は750万円以上、補助率は1/2ですので、最低でも1,500万円以上の投資が必要となります。
6.採択率
採択率は、2025年が初回のため不明です。ですがこれまでの補助金の傾向からすると、3割程度ではないかと考えられます。どれだけ多くても、5割を超える可能性は低いと考えられます。
なお、補助金は申請すると必ずもらえるものではありません。審査基準がある程度公表されており、その基準に従って点数が付され、それにより採否が決定します。
7.一般事業主行動計画との関係
新事業進出補助金の前に公募されていた事業再構築補助金では、一般事業主行動計画(以下、「行動計画」と表記します)は「作らなくても申請できるが、作ると審査で加点される」ためのものでした。
ですが新事業進出補助金においては、その公表が申請するための必須要件となりました。そこで次の項では、行動計画について簡単に説明します。
Ⅱ.一般事業主行動計画
1.概要
一般事業主行動計画とは、次世代育成支援対策推進法という法律に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たり、計画期間や目標、その達成のための具体策や実施時期を定めたものです。
なお行動計画は、従業員101人以上の企業には策定等の義務がありますが、100人以下であれば努力義務です。
2.公表までのステップ
(1)仕事と子育てについて、自社の現状や従業員のニーズを把握する
→たとえば過去5年の間に仕事と子育ての両立に直面した従業員の数や、そのような方がどのような制度を望んでいるのかを把握します。仕事と子育てを両立させるための課題を見つける、とも言えます。
(2)行動計画の策定
→上記の課題解決のために目標を定め(数値がある方が望ましいです)、具体的な取組み内容や計画期間を定めます。
(3)行動計画の公表
→上で定めた行動計画を、「両立支援のひろば」という厚生労働省のサイトにアップロードし、従業員への周知も行います。
(4)行動計画の届出と実行
→最後に、行動計画を定めたということをお近くの労働局に届け出て、計画を実行に移します。これで、一連の流れは終了です。
Ⅲ.最後に
最後となりますが、行動計画はあくまで仕事と子育てが両立できる職場を作ることにより労働者にとって働きやすい環境を作り、その能力を十二分に発揮してもらうためのものです。よい職場環境は従業員の満足度を高め、業績を上げ、そのことが人手不足の中でも雇用確保ができることにつながります。補助金をもらうための飾りではありませんのでお気をつけください。
また、当事務所では補助金や行動計画のご相談、申請支援も承っておりますので、こちらのページよりご連絡ください。