育児休業等給付②

 このページでは雇用保険の育児休業等給付について、2025年4月より追加されたものを説明します。具体的には「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」の2つです。
 両者の位置づけとして、「出生後休業支援給付金」は育休の取得を促すために、従来の「育児休業給付金」や「出生時育児休業給付金」に加えて支給されるもの、「育児時短就業給付金」は産休や育休の終了後などに子育てのための時短取得を促すために支給されるものと考えれば理解しやすくなります。また、名前が従来のものは出生育児休業給付金、新しくできたものは出生休業支援給付金ですので、これらの区別もされておくとよいでしょう。
 それでは、以下で具体的な説明をしてまいります。なお、育児休業給付金と出生時育児休業給付金ついてはこちらのページで説明しております。用語の意味など重複する説明は省いておりますので、不明な点があればこちらをご覧ください。また、法律に定める休業制度そのものについてはこちらのページをご覧ください。

Ⅰ.出生後休業支援給付金

 出生後休業支援給付金は、(出生時)育児休業を取得した労働者が、パパとママそれぞれが14日以上休業した際に支給されるものです。片方が休業を取れない場合は、もう片方の親のみの取得で大丈夫な場合もあります。(出生時)育児休業を取得していることが前提である、ということを踏まえて以下の説明をお読みください。

1.対象となる労働者 次の両方を満たすもの

(1)育児休業給付金と出生時育児休業給付金が支給されること

(2)次のいずれかを満たすこと
①夫婦ともに、対象期間※1内にした(出生時)育児休業の日数が通算して14日以上であること
②次の場合は、従業員(雇用保険の被保険者)のみ①を満たすこと※2
・配偶者がいない、または子どもが配偶者の法律上の子どもではない場合
・配偶者が雇用保険の被保険者ではない場合(自営業やフリーランス、無職など)
・配偶者が生まれた子どもについて産後休業をした場合
・配偶者が日雇いである場合
・配偶者が期間を定めて雇用されており、子どもの生まれた日(出産予定日の方が遅い時は出産予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日から6ヶ月を経過する日までに、労働契約が満了することが明らかである場合
・配偶者が、その勤め先の労使協定により育児休業を取得することができないものとして定められており、実際に事業主に(出生時)育児休業の申出を拒まれたとき
・その他、やむを得ない理由があると公共職業安定所長が認める場合

雇用保険法第61条の10、同施行規則第101条の34第101条の38

2.支給日数
 出生後休業支援給付金の最大支給日数28日です。なお、給付金は(出生時)育児休業を分割取得しても支給されます。通常の育児休業と出生時育児休業はともに2回まで取得できますので、計4回まで出生後休業支援給付金は支給されるということになります(例外として5回目以降可能になることもあります)。

雇用保険法第61条の10、同施行規則第101条の39~第101条の41

3.支給金額
 出生後休業支援給付金は、以下の額が給付されます。

休業開始時賃金日額の13 % × 支給日数

休業開始の最初の180日間は休業開始時賃金日額の67 %が支給されるので、合計で休業前の給料の80 %が支給されることになります。
 なお、(出生時)育児休業給付金と同様、支給金額には上限と下限があります。

雇用保険法第61条の10

4.賃金との調整
 育児休業期間中に賃金の支給があった場合、給付金は次のように減額ないし不支給となることがあります。

厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」より抜粋

5.支給申請手続
(1)提出書類 生後休業支援給付金の要件を満たしていることが確認できる書類
(2)提出先  管轄のハローワーク
(3)申請期限 下の通りです。
①原則 (出生時)育児休業給付金の申請と同時に行います。

②(出生時)育児休業給付金の申請後に出生後休業支援給付金の要件を満たした場合
出生後休業支援給付金の要件を満たした日の翌日から起算して10日以内に「出生後休業支援給付金支給申請書」を提出します。

③やむを得ない理由のため事業主を経由しないで提出する場合
休業を開始した日から起算して4ヶ月を経過する日の属する月の末日までに申請します。

雇用保険法施行規則第101条の42

Ⅱ.育児時短就業給付金

 育児時短就業給付金は文字通り、育児のために時短就業をし、賃金が減少した場合に申請すれば支給されるものです。こちらは2025年の法改正により新たに作られたものです。大まかな捉え方として、育児休業が終わってから、もしくは育児休業を取らずに時短で働く場合、子どもが2歳になるまでは受給することができると考えると、理解しやすくなると思います。

1.対象となる労働者 下の(1)と(2)の両方を満たすもの
(1)‐1 雇用保険の被保険者(短期雇用特例被保険者と日雇労働被保険者は除きます)であること
(1)‐2 ただし、時短後の週所定の労働時間が20時間を下回る(=雇用保険の被保険者の要件を満たさなくなる)場合は、子どもの小学校入学までに同所定労働時間が20時間以上となることが確認できること

 (2)下のいずれかを満たすこと
・(出生時)育児休業給付金の受給者が(出生時)育児休業の終了後、引き続き育児時短就業をしたとき※3
・出生時育児休業の開始の日より前の2年間に、みなし被保険者期間が通算して12ヶ月以上あったとき※4
(疾病や負傷で休業する等、一定の場合は最大4年間まで延長されます)

雇用保険法第61条の7・第61条の12、同施行規則第101条の44・第101条の46

2.対象となる子ども 2歳に満たない子ども

雇用保険法第61条の12、同施行規則第101条の43

3.回数 規定なし(2回以上時短就業をしても申請可能)

4.支給対象月
 育児時短就業給付金が支給されるかどうかは、一月単位で判断されます。具体的には、次の要件をすべて満たした月に支給されます。
・育児時短就業をしていること
・その月の初日から末日まで引き続いて被保険者であること
・その月の初日から末日まで、介護休業給付金や(出生時)育児休業給付金、出生後休業支援給付金の支給を受けることができる休業をしていないこと
・高年齢雇用継続給付を受給していないこと

雇用保険法第61条の12

5.支給金額 
 原則として下記の額が支給されます。

その月に支払われた賃金額の10 %

 気をつける点として、支給されるのは「その月に支払われた」賃金額をもとに計算されることが挙げられます。「時短開始前」の賃金額(これを育児時短就業開始時賃金日額といいます)の10 %ではありません。
 また、その月に支払われた賃金の額が、時短や育休開始時の賃金日額 × 30の90 %以上~100 %未満の場合、一定の支給調整が行われます。
 なお、支給金額とその月に支払われた賃金額の合計には上限(支給限度額)があり、支給金額単独で一定の額(最低限度額)を下回ると、支給金額が0円となります。

雇用保険法第61条の12、同施行規則第101条の47

7.支給申請手続
(1)提出書類 休業等開始時賃金証明票※5※6、育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金支給申請書
(2)提出先  管轄公共職業安定所
(3)提出時期 支給対象月の初日から起算して4ヶ月以内
(4)添付書類 初回申請時は、以下の書類が必要です。
母子健康手帳、労働者名簿、賃金台帳、その他育児時短就業に係る子どもがあること、労働者が雇用保険の被保険者として雇用されていること、賃金の支払状況および賃金の額を確認できる書類、(時短後の週所定の労働時間が20時間を下回る場合のみ)同労働時間が20時間以上となることが確認できる書類
(賃金の支払状況等の確認書類以外は、変更がなければ2回目以降の申請は提出不要です)
(5)その他
・やむを得ない理由があれば、事業主を経由しないで提出することもできます。
・育児休業にかかる給付金の申請は、時短就業の給付金より前にすることになっています。

雇用保険法第61条の12、同施行規則第101条の48

※1 次のいずれかの期間のことを言います。
①被保険者が労働基準法に定める産後休業をしなかった時は、その子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日まで
②産後休業をした時は、次の期間
・出産予定日に子どもが生まれたとき…子どもが生まれた日から起算して16週間を経過する日の翌日まで
・出産予定日の前に子どもが生まれたとき…子どもが生まれた日から、出産予定日から起算して16週間を経過する日の翌日まで
・出産予定日より後に子どもが生まれたとき…出産予定日から、子どもが生まれた日から起算して16週間を経過する日の翌日まで
(16週間=産後休業の8週間+出生後休業支援給付金が定める期間である8週間)

※2 次の場合も含みます
・配偶者が行方不明
・配偶者から暴力(DV)を受け別居中

※3 休業の終了日から時短開始の日までが14日以内であれば、「引き続き」として扱われます。

※4 みなし被保険者期間が12ヶ月に満たなければ、産後休業を取得した者に限り、以下の日より前の2年間で同期間を計算します(これらの日を特例基準日といいます)。
・労働基準法による産前の休業を開始した日
・上記の産前休業を開始する日より前に子どもを出産した場合は、出産した日の翌日
・上記の産前休業を開始する日より前に、母性保護のための休業をしていた場合は、母性保護のための休業を開始した日

※5 休業等開始時賃金証明書をハローワークに提出すると交付されます。詳しくはこちらのページの支給申請手続の項目をご覧ください。

※6 (出生時)育児休業給付金の申請時に提出済みであれば、提出不要です。

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