書類の届出 ~設立および従業員を初めて雇う時~
ここでは労働保険については適用事業かつ継続事業の場合の書類を取り上げます。(一括)有期事業とは異なる扱いとなります。社会保険についても、適用事業所を対象とした説明をします。
Ⅰ.設立時
労働保険については、設立時に労働者がいなければ、特別加入をしない限り提出書類はありません。労災保険や雇用保険は基本的に経営者ではなく、労働者のためのものだからです。また、同居の親族※1や家事使用人、役員等は、ケースバイケースですが、労働者とはみなされません。
社会保険については、法人の場合は以下の書類の提出が必要です。法人の代表者も 労務の対償として報酬を得ている限り、法人に使用される者として扱われるからです。個人事業主については、社会保険に加入することができないので、提出不要です。
1.健康保険・厚生年金保険 新規適用届
(1)提出先 管轄年金事務所
(2)提出時期 設置の日の翌日から起算して5日以内
(3)添付書類 登記事項証明書(法人の場合)、住民票(個人の場合)、保険料預金口座振替依頼書(希望する場合)
健康保険法施行規則第19条
厚生年金保険法施行規則第13条
昭和24.7.28保発74号
2.健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
詳しくはこちらのページの社会保険の項目をご覧ください。
Ⅱ.従業員を初めて雇う時
1.適用事業報告
労働基準法は労働者を一人でも採用した時に適用されます。よって同法の規定によりこの報告を提出する必要があります。
(1)提出先 労働基準監督署
(2)提出時期 事業開始後、遅滞なく
(3)添付書類 なし
労働基準法第104条の2、同施行規則第57条
2.労働保険 保険関係成立届
(1)提出先 管轄労働基準監督署
(2)提出時期 保険関係が成立した日の翌日から10日以内
(3)添付書類 登記事項証明書(法人の場合)、住民票(個人の場合)
(提出書類で事業所の所在地が確認できない場合は、賃貸借契約書や公共料金の請求書等のコピーが必要になります)
(4)その他
・この成立届と「労働保険 概算保険料申告書」を、「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」または「雇用保険 適用事業所設置届」と併せて提出する場合、労基署以外の機関にも提出できます。詳しくは下記4‐(1)‐①‐aをご覧ください。
・雇用保険の書類より先にこちらの届を提出する必要があります。
・用紙が複写式のため、ダウンロードして使うことはできません。
労働保険徴収法第4条の2、同施行規則第4条
3.雇用保険 適用事業所設置届
(1)提出先 管轄公共職業安定所
(2)提出時期 設置の日※2の翌日から起算して10日以内
(3)添付書類 「労働保険 保険関係成立届」の事業主控、雇用保険 被保険者資格取得届、登記事項証明書(法人の場合)、住民票(個人の場合)、賃金台帳、労働者名簿、その他事業所の名称及び所在地等を証明することができる書類
(提出書類で事業所の所在地が確認できない場合は、賃貸借契約書や公共料金の請求書等のコピーが必要になります)
(4)その他
・この設置届を「労働保険 保険関係成立届」と「労働保険 概算保険料申告書」と併せて提出する場合、労基署以外の機関にも提出できます。詳しくは下記4‐(1)‐①‐aをご覧ください。
・裏面の登録印は、事業主印は不要です。
・手続きが済むと、「雇用保険 適用事業所設置届 事業主控(適用事業所台帳)」が交付されます。
雇用保険法施行規則第141条
4.労働保険 概算保険料申告書
(1)提出先 所轄都道府県労働局
以下の場合は、各欄に書かれている場所に提出しても大丈夫です。①は諸々の届出をワンストップで提出できるので、スムーズに手続きができます。なお、日本銀行は本店や支店だけでなく、代理店等、つまり全国の銀行や信用金庫、ゆうちょ銀行(郵便局)も含みます。
①
a.要件 次の3つすべてを満たす場合
・一元適用事業であること
・労働保険事務組合に事務処理を委託していないこと
・「労働保険 保険関係成立届」と概算保険料申告書を、「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」または「雇用保険 適用事業所設置届」と併せて提出すること
b.提出先
・管轄年金事務所
・管轄労働基準監督署
・管轄公共職業安定所
②
a.要件 次のいずれかの場合
・一元適用事業であり、労働保険事務組合に事務処理を委託していない場合(雇用保険の保険関係のみ成立している事業は下記③)
・二元適用事業で労災保険の一般保険料を支払う場合
b.提出先
・日本銀行(口座振替の場合は不可)
・管轄年金事務所(口座振替も、労働保険事務組合への事務処理の委託もしておらず、6月1日から40日以内に提出する場合のみ)
・管轄労働基準監督署
③
a.要件 次のいずれかの場合
・一元適用事業であり、労働保険事務組合に事務処理を委託していること
・一元適用事業であり、労働保険事務組合に事務処理を委託しておらず、雇用保険のみ保険関係成立していること
・二元適用事業であり、雇用保険の一般保険料を支払うこと
b.提出先
・日本銀行(口座振替の場合は不可)
・管轄年金事務所(口座振替も、労働保険事務組合への事務処理の委託もしておらず、6月1日から40日以内に提出する場合のみ)
(2)提出時期および納付期限 保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内
(3)添付書類 第3種特別加入の場合はあります。
(4)その他
・保険料は口座振替も可能です。納付のための手間が省け、納め忘れも防ぐことができます。
・一定の要件を満たせば、延納(分割払い)もできます。
・一般の保険料と特別加入の保険料は別々に申告します。
・第3種特別加入については一定の添付書類が必要になります。
・複写式なので、ダウンロードして使用することはできません。
労働保険徴収法第15条、同施行規則第38条
5.健康保険・厚生年金保険 新規適用届
上記の設立時の説明と同じです。
6.従業員の方を採用する時に提出する書類
こちらのページをご覧ください。
7.名簿等の作成
労働者を雇うにあたり、以下のものを事業所に備え付けておく必要があります。満18歳未満の労働者を雇い入れる場合の説明は、こちらのページの労働法の項目をご覧ください。
・労働者名簿
・賃金台帳
・(満18歳未満の労働者を雇い入れた場合)年齢を証明する戸籍証明書
・(労基署の許可を受けて満15歳到達年度内にある児童を雇い入れた場合)児童の年齢を証明する戸籍証明書(氏名、生年月日の記載のある住民票記載事項証明書でも可)、修学にさしつかえないことを証明する学校長の証明書、親権者または後見人の同意書
労働基準法第56条・第57条・第107条・第108条
※1 親族の範囲は民法第725条に規定があり、以下のいずれかに当てはまれば親族となります。
・6親等内の血族
・配偶者
・3親等内の姻族
※2 従業員を初めて採用して適用事業者となった日(または任意適用事業所となった日)のことを言います。