産後にかかる制度や事務
このぺージでは従業員の出産後に適用される制度や事務について、主に労働基準法の観点から説明します。他の法律による制度はリンク先で紹介しています。また、産前や出産時についてはこちらのページをご覧ください。
なお、休業や休暇については就業規則に定める義務がありますので、漏れのないようにしてください。
Ⅰ.産後休業
1.産後の休業制度
(1)出産の定義
労働基準法上の「出産」 とは妊娠4ヶ月以上( =85日以上。労基法では1ヶ月を28日として計算します)の出産をいいます。したがって、妊娠4ヶ月以後であれば人口妊娠中絶や死産、流産についても産後の休業等の対象になります(産前ではありません)。
なお、健康保険や厚生年金保険でも同じ定義が用いられます。
(2)原則
労働者が出産した場合、使用者は原則として8週間、休業を与えなければなりません。8週間の起算日は、現実の出産日の翌日です(予定日ではありません)。なお、多胎妊娠の場合も産後は8週間です。
産前と異なり、請求の有無にかかわらず、産後の休業を与えなければなりません。たとえ労働者が希望したとしても就労させることはできません。
(3)6週間経過後
産後8週間は原則休業ですが、以下の両方の要件を満たせば、産後6週間経過後に労働者を使用することができます。
・産後6週間経過後に、労働者から就労の請求があったこと
・その労働者について、医師が支障がないと認めた業務に就かせること
労働基準法第65条
昭23.12.23基発1885号、昭26.4.2婦発113号
2.解雇制限、休業期間中の賃金、平均賃金の算出方法、年次有給休暇の発生要件(労働基準法)
3.特定受給資格者 / 特定理由離職者、基本手当の受給期間の延長(雇用保険法)
4.出産手当金(健康保険法)
2~4いずれも、産前の休業と同じです。
5.社会保険料の免除および改定
産休中は社会保険料は事業主分も含めて、申出により免除されます。また、産休明けに時短等で賃金が減少した場合に、社会保険料を改定する制度もあります。詳しくはこちらのページをご覧ください。
Ⅱ.産後一年以内にかかるもの
ここでは産後休業以降、産後一年以内まで適用されるものを紹介します。
1.変形労働時間制の適用
2.時間外、休日労働の禁止
3.深夜業の禁止
4.坑内業務の就業制限
5.危険有害業務の就業制限
1~5いずれも、産前の休業と同じです。ただし、軽易な業務への転換はなくなります。
Ⅲ.育児にかかるもの
1.育児時間
子育てをしている労働者は、要件を満たせば、育児時間を請求できます。育児時間の長さは1日2回、各々につき少なくとも30分です。1日の労働時間が4時間以内であれば、1日1回の付与で足ります。休憩時間にはカウントされません。
要件は下の通りです。
・生後満1年に達しない生児を育てる女性であること
・その時間がその生児を育てるための時間であること
育児時間は、生児を育てるために必要な時間である限り、原則として労働者が請求した時間に与えなければなりません。有給のように時季変更することは難しいと考えた方がよいです。また、必ずしも勤務時間の途中でなくても、その始めや終りに与えることもできます。
育児時間中に労働者を働かせることは違法です。なお、育児時間を有給とするか否かは、産前産後の休業と同じく、使用者の自由です。
労働基準法第67条、同施行規則第条
昭26.1.9基収8996号、昭33.6.25基収4317号
2. 育児介護休業法では子どもを養育する労働者について、休業や休暇、時短等の様々な制度や措置が定められています。量が膨大ですので、詳しくはこちらのページをご覧ください。
Ⅲ.保険料、その他
ここでは休業中の保険料について説明します。
1.労災保険、雇用保険
これらの労働保険の保険料は実際に支払った賃金に対して徴収されます。よって、休業中は無給であれば事業主、労働者ともに保険料は発生しません。有給であれば、たとえ満額支給であれ通常の6割の支給等であれ、通常の保険料と同じ計算方法によって保険が計算されます。
2.健康保険、厚生年金保険
これらの保険料は標準報酬月額に対して課されます。よって休業中は無給であれ有給であれ、納付義務はありますが、免除等も受けられます。詳しくはこちらのページをご覧ください。
3.雇用保険
事業主の業務として直接関わりがあるわけではありませんが、妊娠、出産している者は、離職後に以下の措置を受けられます。
・基本手当の受給期間の延長(妊娠、出産、育児。最大4年間に延長されます)