書類の届出 ~従業員を採用した時 / 採用後に被保険者に該当した時~
日雇いの方を除き、正社員かパート等の非正規雇用かに拘わらず、雇い入れた労働者が雇用保険や社会保険の被保険者に該当する場合、以下の書類の提出が必要になります。また、既に雇用している労働者が労働時間の増加等により、新たに被保険者となった時も提出します。被保険者に該当するかどうかはこちらのページで解説しております(被扶養者に該当するかどうかも記載しています)。
Ⅰ.労働保険
労働保険には雇用保険と労災保険があります。雇用保険については書類提出が必要ですが、労災保険は基本的には提出すべき書類がありません。年度更新の際に、採用した者の賃金を漏れなく申告すれば大丈夫です。
1.雇用保険 被保険者資格取得届
(1)提出先 管轄公共職業安定所
(2)提出時期 事実のあった日※1の属する月の翌月10日まで
(3)添付書類
①一般の労働者にかかるもの
a.事業主として初めて資格取得届を提出する場合
労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、他の社会保険の資格の取得関係書類等(被保険者となったことの事実や、その年月日を証明することができる書類)
b.2回目以降 期限後の提出等でない限り、特に不要です。
②同居の親族、兼務役員(同時に従業員としての身分も有する役員のこと)、在宅勤務者が資格取得する場合
それぞれの区分の雇用実態証明書を提出します。この証明書と同時に出す書類については複雑ですので、同居の親族についてはこちら、兼務役員についてはこちら、在宅勤務者についてはこちらの厚生労働省のHPをご覧ください。
(4)その他
・手続きが済むと、雇用保険の被保険者資格喪失届と被保険者証が交付されます。
・雇用保険の被保険者番号があっても分からない方については、前職の会社名と在職期間を備考欄に記入するか、履歴書のコピーを添付します。
・外国人の雇用については、厚生労働省のHPをご覧ください。滞在資格により、就労の可否や資格外活動許可書等の確認の要否が異なります。
・雇用する外国人について、雇用保険の被保険者に該当しない場合は、外国人雇用状況届出書を提出する必要があります。このページの最下部で説明しています。
雇用保険法第7条、同施行規則第6条
2.労働保険 増加概算保険料申告書
労災保険については基本的には書類の提出は不要と述べましたが、従業員をたくさん採用して保険料が大きく増加する見込みであれば、別途手続きが必要になります。詳しくはこちらのページの「労働保険 増加概算保険料申告書」の項目をご覧ください。
3.その他
65歳以上の労働者が特例高年齢被保険者となることを希望する場合は「雇用保険 マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」の提出が必要となります。提出するのは労働者本人ですが、事業主は事業主の記入事項を記入したり、添付書類を渡したりすることになります。
Ⅱ.社会保険
1.健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
こちらの書類には報酬月額を書く欄があり、通貨、現物に分けて記入します。現物については厚生労働大臣によって定められた額を記入することになっています。具体的な額はこちらの年金機構のホームページをご覧ください。
また、健康保険、厚生年金保険の保険料の算出法について知りたい方はこちらのページもご覧ください。
(1)提出先 管轄年金事務所
(2)提出時期 資格を取得した日の翌日から起算して5日以内
(3)添付書類 上2つは該当者がいる場合に提出します。詳細は下記2および3をご覧ください。
・国民年金第3号被保険者関係届
・被扶養者(異動)届
・厚生年金保険被保険者 ローマ字氏名届 / 国民年金第3号被保険者 ローマ字氏名届(外国籍の方の場合)
健康保険法第46条・第48条、同施行規則第24条
厚生年金保険法第25条・第27条、同施行規則第15条・第15条の2
2.国民年金 第3号被保険者関係届(被扶養者がいる場合)
こちらは、採用した労働者が厚生年金保険の被保険者資格を取得した場合に、その方により生計を維持される配偶者が厚生年金保険に加入していない20歳以上60歳未満である(=被扶養配偶者に該当する)時に提出します。健康保険の被扶養者(異動)届も兼ねています。
(1)添付書類 下記の被扶養者(異動)届をご覧ください。
(2)その他
・健康保険が協会けんぽと健康保険組合のどちらに加入しているかにより様式は異なります(書類のタイトルは同じです)。
・配偶者以外に被扶養者がいる労働者について、健康保険組合の加入者用の届を出す場合は、下記の被扶養者(異動)届も必要になります。
国民年金法第12条、同施行規則第6条の2
3.被扶養者(異動)届(被扶養者がいる場合)
被保険者(従業員)をAさん、被扶養の認定を受ける方をBさんとして説明します。
(1)添付書類
以下の①~⑤の書類があります。①と②は全員、③~⑤は該当すれば提出するものです。なお、①と②でも提出を省略できる場合もあります。
①続柄の確認のための書類
以下のいずれかを提出します。
・Bさんの戸籍謄(抄)本
・住民票の写し(コピー不可、個人番号の記載のないもの。Aさんが世帯主で、Bさんと同一世帯である場合のみ)
ただし、次の両方にあてはまれば添付は不要になります。
・事業主が上の書類でAさんBさんの続柄を確認していること
・AさんBさんともにマイナンバーが届書に記入されていること
②収入要件確認のための書類
添付書類が必要かどうか、a~cに分けて説明します。aに当てはまれば添付は不要、bに当てはまれば必須です。ただし、aに当てはまる方でも、cに当てはまればcに関する書類の提出が必要になります。
a. 添付が不要になる場合 Bさんについて、以下のどちらかに当てはまれば、提出は不要になります。
・所得税法の規定による控除対象配偶者や扶養親族であり、事業主が確認した時
・16歳未満
b. 添付が必要になる場合 Aさんの税法上の合計所得が1,000万円を超える(給与収入ではありません)場合は、以下の書類の添付が必要になります。
ア. 退職したことにより収入要件を満たす場合
退職証明書または雇用保険被保険者離職票のコピー
イ. 雇用保険の失業給付受給中、または同給付の受給終了により収入要件を満たす場合
雇用保険受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)のコピー
ウ. 年金受給中の場合
現在の年金受取額がわかる年金額の改定通知書などのコピー
エ. 自営(農業等含む)による収入、不動産収入等がある場合
直近の確定申告書のコピー※2
オ. 上記以外の収入がある場合
課税(非課税)証明書等
c. 共通して提出が必要な書類(障害年金、遺族年金、傷病手当金、出産手当金、失業給付等の非課税となる収入がある場合)
受取金額のわかる通知書等のコピー
③Bさんが別居中の場合、仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類
送金者名、受取人名およびその金額が確認できる書類の添付が必要になります。ただし、Bさんが16歳未満か、16歳以上でも学生の場合は省略できます。
a. 振込の場合
預金通帳等のコピー(通帳の名義および振込日と金額のページ)、振込明細書等
b. 送金の場合
現金書留の控え(コピー)
④内縁関係の場合、これを確認するための書類
あくまで一例ですが、
・内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本
・被保険者の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)
等が挙げられますが、状況に応じて他の書類の提出が求められることもあります。
⑤その他
・同居の確認については、原則、書類の添付は不要です(年金機構側で確認を行うため)。しかし、機構側で確認できない場合、別途、住民票の提出を求められることがあります。
・海外に住んでいる被扶養者を認定する場合の書類については、「被扶養者 現況申立書」等の提出も必要になります。詳しくは年金機構のこちらのページをご覧ください。
(2)その他
・書類の収入欄は、見込み額を記入します。
・チェックボックス等の細かい欄も忘れず記入する必要があります。
健康保険法施行規則第38条
平30.3.22保保発第1号
4.健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届
こちらは健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届を提出した従業員が、兼業等により他の事業所でも健康保険・厚生年金保険に加入している場合に出すものなので、該当しなければ提出不要です。形式としては従業員(被保険者)が提出することになっています。
(1)提出先 年金事務所、健康保険組合(選択する事業所により提出先は変わります)
(2)提出時期 2つ以上の事業所に勤務することとなった日の翌日から起算して10日以内
(3)添付書類 健康保険の被保険者証(すでに協会けんぽの被保険者である場合。整理番号の変更のためです)
(4)その他 この書類の提出以降、健康保険・厚生年金保険の各種の手続き書類において、備考欄の「二以上勤務」を〇で囲むことになります。
健康保険法施行規則第1条の2・第2条・第37条
厚生年金保険法施行規則第1条・第2条
5.厚生年金保険 任意単独被保険者資格取得申請書
こちらは、適用事業所以外の事業所に雇用される70歳未満の方が、個人で厚生年金保険に加入する時に提出するものです。提出自体は労働者本人が行います。
(1)提出先 年金事務所
(2)添付書類 事業主の同意書、個人番号や基礎年金番号、報酬月額を明らかにすることができる書類
(3)その他 こちらの認可を受けると、各書類の届出義務や保険料負担等が生じます。
厚生年金保険法第10条、同施行規則第4条
6.厚生年金保険 高齢任意加入被保険者資格取得(申出・申請)書
こちらは70歳以上で老齢基礎年金や老齢厚生年金等の受給権のない方が、個人で厚生年金保険に加入する時に提出するものです。適用事業所かどうかに拘わらず加入でき、適用事業所なら申出書、そうでなければ申請書を提出します。提出自体は労働者本人が行います。
(1)提出先 年金事務所
(2)添付書類 生年月日についての市区町村長の証明書または戸籍抄本、年金手帳(添付できないときは、その事由書)、共済組合等の組合員期間または加入者期間を確認した書類、合算対象期間を明らかにすることができる書類、報酬月額を明らかにすることができる書類、事業主の同意書
(3)その他 適用事業所でなければ各書類の届出義務や保険料負担等が生じます。しかし適用事業所であれば、すべて労働者の方の義務となります(事業主の同意により、保険料の折半負担と納付義務を事業主が負うこともできます)。
厚生年金保険法附則第4条の3・附則第4条の5、同施行規則第5条の2
Ⅲ.労働法
1.(児童の)使用許可申請書
満15歳到達年度内にある児童を使用する場合、所轄労働基準監督署長の許可が必要になります。
(1)提出先 労働基準監督署
(2)添付書類 児童の年齢を証明する戸籍証明書(氏名、生年月日の記載のある住民票記載事項証明書でも可)、修学にさしつかえないことを証明する学校長の証明書、親権者または後見人の同意書
(3)その他 以下の7点も押さえておきましょう。
①許可を受けてからでなければ児童を働かせることはできません。
②旅館、料理店、飲食店または娯楽場における業務等、就業が禁止されている業務もあります。
③満15歳到達年度内にある児童を含め、満18歳未満の者(年少者)については、年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければなりません。
④民法には「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」という決まりがあります。労働契約を結ぶには保護者等との同意が必要ということです。
⑤保護者等が、未成年者に代わって労働契約を締結したり、賃金を受けとったりすることはできません。
⑥親権者等または行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合、将来に向ってこれを解除することができます。
⑦事業主には労働者の年齢確認義務があります。未成年の労働者が18歳以上であると自己申告を信じた結果として上記の義務を行わなかった場合、法令違反となります。
労働基準法第56条~第59条
年少者労働基準規則第1条・第8条・第9条
昭和27.2.14基収52号
2.外国人雇用状況届出書
この届出書は、雇い入れる労働者が外国人であり、雇用保険の被保険者でない場合に提出するものです。
(1)提出先 管轄公共職業安定所
(2)提出時期 離職した日の属する月の翌月の末日
(3)その他 一定の事項について、在留カード等での確認義務もあります
労働施策総合推進法第28条、同施行規則第10条~第12条
※1 従業員を雇用した、または 任意適用事業所となった日のことを言います。
※2 自営業の場合、収入は年間総収入から直接的経費(それがなければ事業が成り立たない経費のことです。例として、製造業における原材料費、小売業における仕入れ費、農業における種稲費、肥料費があります。税金や減価償却費、広告宣伝費等は含まれません)を差し引いた額となります。