書類の届出 ~事業所が労働・社会保険に任意に加入、脱退する時~

 労働保険、社会保険は法人等では加入が義務付けられていますが、個人事業の一部等は任意適用として加入の対象外になっています。しかし事業主が、労働者の待遇の向上させたいので加入したい、と考えている場合もあるでしょう。ここでは、そうした事業所が任意で加入、あるいは脱退する時の手続きを説明します。
 なお、労災保険と雇用保険については、従業員が希望する等、一定の要件を満たす場合は加入や申請が義務となります。併せてその要件もチェックしてください。

1.加入する時

1.労災保険 任意加入申請書

(1)提出先  都道府県労働局長(労基署経由)
(2)添付書類 なし
(3)加入が義務となる場合 労働者の過半数が加入を希望する時※1
(4)その他  労災保険に加入前の業務災害について、保険給付の特例あり

整備法第5条、整備省令第1条
労働保険徴収法施行規則附則第2条

2.雇用保険 任意加入申請書

(1)提出先  都道府県労働局長(職安所経由)
(2)添付書類 労働者の1 / 2以上の同意を得たことを証明することができる書類
(3)認可後に提出が必要な書類 雇用保険 適用事業所設置届、雇用保険 被保険者資格取得届
(4)加入が義務となる場合 労働者の1 / 2以上が加入を希望する時※1

雇用保険法附則第2条
労働保険徴収法附則第2条、同施行規則附則第2条

3.労働保険 概算保険料申告書
 概算保険料は事業所の設立時のみならず、保険関係が成立した時にも申告、納付する必要があります。詳しくはこちらのページをご覧ください。


4.労働保険 増加概算保険料申告書(当てはまる場合のみ)
 労災保険または雇用保険の保険関係だけが成立してい た事業が、両保険とも成立することになったため、一般保険料率が変更になった場合に提出します。
 詳しくはこちらのページのⅡ-2-(1)-②をご覧ください。申告期および納付の日が「増加が見込まれた日」ではなく「新たな保険関係が成立した日」の翌日から起算して30日以内、であること以外は同じです。


5.労災保険 特例による保険給付申請書
 この申請書は、 労災保険に加入後に、未加入であった期間の業務災害について保険給付を受けようとするときに提出するものです。この場合、労働保険料のほか、特別保険料も徴収されます。
 
(1)提出先  管轄労働基準監督署
(2)申請が義務付けられる場合 労働者の過半数が希望する時

整備法第18条~第19条、整備省令第7条~第9条

6.健康保険・厚生年金保険 任意適用申請書

(1)提出先  管轄年金事務所
(2)添付書類 労働者(被保険者となることができる者に限る)の1 / 2以上の同意書
(3)認可後の提出書類 被保険者資格取得届、被扶養者異動届(被扶養者がいる場合)

健康保険法第31条、同施行規則第21条
厚生年金保険法第6条、同施行規則第13条の3

7.特別加入
 労災保険は事業主や法人の代表者、役員等は加入することができませんが、一定の要件を満たせば「特別加入」の申請をすることができます。こちらは別途ご相談ください。

Ⅱ.脱退する時

 任意加入した事業所は、任意で脱退することもできます。ただし、一定数の労働者の同意を得る等の条件があります。労働者ののための保険なので、事業主の一存では脱退できないと考えてください。


1.労働保険 保険関係消滅申請書
 
(1)脱退の要件
①労災保険
・労働者の過半数の同意を得ること
・保険関係が成立した後、1年を経過していること※2
・(特例による保険給付が行われている場合)特別保険料の徴収期間が経過していること

①雇用保険
・労働者の3 / 4以上の同意を得ること※3

(2)提出先  管轄都道府県労働局(労災保険は労基署、 雇用保険は職安所を経由)
(3)添付書類 労働者の同意を得たことを証明できる書類

整備法第8条・第18条~第19条、整備省令第3条・第8条
労働保険徴収法附則第4条、同施行規則附則第3条

2.雇用保険 被保険者資格喪失届(全員分、労災のみの場合は不要)
 
(1)提出先  管轄公共職業安定所
(2)提出時期 消滅申請書により消滅の認可を受けた日の翌日から起算して10日以内
(3)その他  詳しくはこちらのページをご覧ください。 


3.労働保険 確定保険料申告書
4.労働保険 労働保険料還付請求書(還付を受けられる場合)
 確定保険料申告書は、 年度更新の時だけでなく、保険関係が消滅した場合にも提出することになっています。併せて、概算保険料との清算もします。確定保険料が既に納付した概算保険料を超えていれば還付が受けられますが、そうでなければ不足分を納付しなければなりません。

(1)提出先  概算保険料申告書と同じ(こちらのページをご覧ください)
(2)提出時期 保険関係が消滅した日から起算して50日以内(不足分の納付期限もこれと同じです)※2
※保険関係は、任意脱退について厚生労働大臣の認可があつた日の翌日に消滅
(3)添付書類 なし

労働保険徴収法附則第19条、同施行規則附則第33条

5.健康保険 任意適用取消申請書
6.厚生年金保険 任意適用取消申請書
 
(1)脱退の要件 労働者(被保険者となることができる者に限る)の3 / 4以上の同意があること※3
(2)提出先  管轄年金事務所
(3)添付書類 労働者の同意を得たことを証明できる書類、健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届(全員分)、健康保険被保険者証(全員分)、健康保険 被保険者証回収不能・滅失届(該当する場合)※4

健康保険法第33条、同施行規則第22条
厚生年金保険法第8条、同施行規則第14条

※1 必要な同意数は、労災保険は過半数、雇用保険は1 / 2以上と、少し異なっています。

※2 保険関係は、任意加入については厚生労働大臣の認可があった日に成立し、任意脱退については認可のあった日の翌日に消滅します。

※3 必要な同意数は、加入時は1 / 2以上ですが、脱退時は3 / 4以上と、少し異なっています。

※4 資格喪失届等についてはこちらのページをご覧ください。

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