健康保険の被保険者になる時
このページでは働く人が健康保険の被保険者になる時はいつなのかについて取り上げます。基本的に正社員や、フルタイムで正社員と同じ時間、同じような待遇で働いている方は被保険者になりますので、それ以外の場合はどうかということを中心に説明します。被保険者に該当した時の提出書類はこちらのページをご覧ください。
なお、事業所が適用事業所または任意で加入していることを前提にお話をします。
Ⅰ.採用時
まずは、従業員の採用時に社会保険の被保険者となるかどうかの判断の仕方を説明します。
1.被保険者の区分
被保険者には、大きく分けて以下の4つの区分や種類※1があります。
(1)通常の労働者
いわゆる正社員のことです。
(2)短時間就労者(パートタイマ―等)
1週間の所定労働時間および1ヶ月間の所定労働日数が通常の労働者の3 / 4以上である労働者のことを言います。
(3)短時間労働者
1週間の所定労働時間または1ヶ月間の所定労働日数が通常の労働者の3 / 4未満の、一定の要件を満たす労働者のことを言います。
(4)日雇特例被保険者
日雇労働者はこちらの被保険者となります。保険給付は上3つと異なります。
日雇特例被保険者は他の3つと制度や給付の仕方が異なるので、以下では(1)~(3)の被保険者を中心に説明します。
健康保険法第3条
2.被保険者とならない場合
健康保険法では、「適用事業に使用される者」は被保険者であるとされています。ただし一定の要件に当てはまれば適用の対象外となります。具体的には以下の者は適用除外となります。
(1)臨時に使用される者であって、次のいずれかに当てはまるもの
・日々雇い入れられる者
・2ヶ月以内の期間を定めて使用される者であって、その期間を超えて使用されることが見込まれないもの
(2)季節的業務に使用される者であって、継続して4ヶ月を超えて使用されることが見込まれないもの
(3)臨時的事業の事業所に使用される者であって、継続して6ヶ月を超えて使用されることが見込まれないもの
(4)所在地が一定しない事業所に使用される者
(5)後期高齢者医療の被保険者等
(6)承認を受けて国民健康保険組合に加入している者や、国民健康保険組合の事業所に使用される者
(7)船員保険の被保険者
(8)下の①②の両方に当てはまる者
①1週間の所定労働時間または1ヶ月間の所定労働日数が通常の労働者の3 / 4未満であること
②以下の要件に一つでも当てはまるもの
・1週間の所定労働時間が20時間未満であること
・報酬が88,000円未満であること※2
・2ヶ月以内の期間を定めて使用される者であって、その期間を超えて使用されることが見込まれないこと
・学生であること(高校、大学、専門学校、各種学校等)
健康保険法第3条
3.短時間労働者が被保険者となる場合
短時間労働者は所定の労働時間や日数が通常の労働者の3 / 4未満なので各被保険者とはなりませんが、次の要件をすべて満たせば被保険者となります。具体的には以下の通りです。
(1)特定適用事業所に使用されること※3
特定適用事業所とは、被保険者の総数が常時100人を超える適用事業所のことを言います(令和6年10月からは100人から50人に変わります)。なお、サービス業等は人数にかかわらず適用事業所になることはありませんので、100人を超えるかどうか気にする必要はありません。
また、ここでは詳細は省きますが、労使合意により任意で特定適用事業所となることもできます。
(2)以下の要件をすべて満たすこと
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・報酬が88,000円以上であること※2
・2ヶ月を超える期間を定めて使用されること(または2ヶ月以内の期間を定めて使用されるが、その期間を超えて使用されることが見込まれること)
・学生でないこと(高校、大学、専門学校、各種学校等)
健康保険法第3条・附則第46条
厚生年金保険法附則第17条
4.具体的な判断基準
法律では健康保険の適用対象となる者、ならない者が定められていますが、具体的に当てはめると被保険者となるのか判断がつきにくいことがあります。そこで以下で、より詳細な基準を説明します。
・法人の代表者等
法人の取締役は、代表取締役も含め、法人から、労務の対償として報酬※4を受けていれば被保険者となります。
・個人事業主
被保険者とはなりません。基本的には、その家族も同様です。
・就職予定者
最高学年の在学者で、卒業後に就職予定の事業所で職業実習を受けているものは、被保険者となります。
・試用期間中の者
試用期間中であっても、雇用された日から被保険者となります。
・休業手当を受ける者※5
休業期間中に休業手当等を受ける者も、被保険者となります(被保険者資格は消滅しません)。
・採用当初から自宅待機とされた者
雇用契約が成立しており、かつ、休業手当等※5が支払われる時は、自宅待機の者も被保険者となります。資格取得の日は、休業手当等の支払の対象となった日の初日です。
・適法に就労する外国人
被保険者となります。日本人と同様の取扱いです。
・労働組合の専従者
事業主との関係では被保険者とはなりません。労働組合に使用される者としてのみ被保険者となります。
・海外派遣される者
日本と派遣先の国が社会保障協定を結んでいるかや、派遣期間等により異なります。
・2以上の事業主に雇用される者(=兼業や副業をしている者)
自社と、兼業先や副業先の両方が適用事業所であれば、その両方において被保険者となります。
・事業主に雇用されつつ自営業を営む者
適用事業の事業主に雇用されつつ自営業を営む者については、その事業主の下で就業する部分は、被保険者として取り扱われます(自営業の収入については社会保険料の支払いは不要ということです)。
昭13.10.22社庶229号
昭16.12.22社発1580号
昭24.7.7職発921号
昭24.7.28保発74号
昭50.3.29保険発25号
平4.3.31保険発38号
Ⅱ.採用後
続いて、採用後に被保険者となる場合について説明します。前提として、適用除外となる事由が一つだけあり、その他の条件は満たしているものと考えてください。
1.新たに被保険者となる場合
採用当初は被保険者ではなくても、その後の労働条件の変更等により被保険者となる場合があります。具体的には以下のパターンがあります。
(1)臨時に使用される者
日々雇い入れられる者は1ヶ月を超えて、2ヶ月以内の期間を定めて使用される者はその期間を超えて、引き続き使用された場合、被保険者となります。資格取得日は1ヶ月または定めた期間を超えて使用された日※6です。
(2)短時間労働者
採用当初は1週間の所定労働時間または1ヶ月間の所定労働日数が通常の労働者の3 / 4未満であり、一定の要件を満たさず被保険者とはならなかった者も、被保険者となることがあります。上で説明したことの反対ですが、具体的には以下のパターンがあります。資格取得日は、要件をすべて満たした日※7です。
・事業所の厚生年金保険の被保険者数が増加し、または任意で特定適用事業所になったこと
・上記Ⅰ‐3‐(2)の要件をすべて満たしたこと(労働時間や報酬が増加した、学生でなくなった等)
・1週間の所定労働時間および1ヶ月間の所定労働日数が増加し、通常の労働者の3 / 4以上となったこと
なお、特定適用事業所の厚生年金保険の被保険者数が減少し100人以下となっても、申出をしない限りは被保険者資格を喪失することはありません。
(3)季節的業務または臨時的事業の事業所に使用される者
(1)の臨時に使用される者と異なり、4ヶ月や6ヶ月を超えて使用されたり、途中から見込まれたりしても、被保険者とはなりません。
健康保険法第3条・第35条・附則第46条
※1 厳密には、任意継続による被保険者もいます。また、短時間就労者は法律用語ではなく、短時間労働者は法律上は「特定四分の三未満短時間労働者」と言います。
※2 賞与や残業代、通勤手当等は除きます。
※3 人数は一つの事業所単独ではなく、事業主が同じすべての適用事業所の人数で判断されます。また、100人を超えるかどうかは、1年のうち6ヶ月間以上、被保険者の総数が101人以上となることが見込まれるかどうかで判断されます。なお、被保険者とは厚生年金の被保険者のことを言います。
※4 交通費等の実費のみ支給されている場合は報酬とは言えません。
※5 厳密には、労働基準法第26六条の規定に基づく休業手当または労働協約等に基づく報酬のことを言います。
※6 たとえば1ヶ月の期間を定めて採用されていた場合、2ヶ月目の初日に被保険者資格を取得します。
※7 厳密には、適用除外の要件に該当しなくなった日です。厳密には、適用除外の要件に該当しなくなった日です。