書類の届出 ~ボーナス(賞与)を支払った時~
このページでは社員にボーナスを支払った時に行う手続きを説明します。法令上は賞与等と言いますが、ここでは分かりやすさを考慮してボーナスと表記します。
ボーナスは、労災保険や雇用保険(=労働保険)においても、健康保険や厚生年金保険(=社会保険)においても、保険料徴収の対象になります。ただし提出書類の有無や申告の仕方が両者で異なりますので、以下で詳しく説明します。
Ⅰ.労災保険、雇用保険
労働保険については、ボーナスを支払う度に何かをする必要はありません。ボーナスは毎月の給料と同じく、賃金の支払い総額に含めて毎年6~7月に申告すればよいからです。
対して、社会保険では支給の都度提出が求められ、あるいは支給しなくても提出が必要になることがあります。制度が少し複雑ですので、以下で社会保険料とボーナスについて、制度の概要に触れながら説明していきます。
Ⅱ.健康保険、厚生年金保険
1.賞与とは
健康保険法、厚生年金保険法では賞与とは「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるもの」※とされています。簡単に言えば「名称を問わず支給が年3回以下のもの」ということです。たとえ手当の名前が期末手当や特別手当であれ、給与規則等の規定に基づき、実態で賞与かどうか判断されるということです。
康保険法第3条
厚生年金保険法第3条
2.保険料の決定方法および標準賞与額について
毎月の給料と同様、ボーナスも社会保険料の納付の対象になります。保険料の決め方ですが、給料であれば報酬月額や標準報酬月額を基に計算されます。ボーナスも同じで、支払われた金額を基に「標準賞与額」が決められ、それに保険料率を掛けることで保険料額が得られます。
(1)標準賞与額の基本的な決定方法
標準賞与額は、ボーナスが支払われた月ごとに算出します。具体的には賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てたうえで決定されます。標準報酬月額と異なり、等級はありません。
現物で支払われる場合、その金額をいくらとするかは厚生労働大臣が定めます(具体的な額はこちらの年金機構のホームページをご覧ください)。
(2)上限額
標準報酬月額に上限があったように、標準賞与額にも上限があります。標準報酬月額と同様に健康保険と厚生年金保険とで上限額が異なるのでご注意ください。
①健康保険 年度の累計で573万円
②厚生年金保険 月の累計で150万円
健康保険の上限額は年度で把握されます。この年度は毎年4月1日~3月31日と決められており、企業年度とは異なることもあります。上限を超えた場合、同じ年度内で翌月以降にボーナスが支給されても標準賞与額はゼロ、つまり保険料もゼロとなります。
厚生年金保険では上限額に達したかどうかは年度ではなく、月単位で判断されるので気をつけてください。
なお、従業員について、転職等により保険者が変更された場合(協会けんぽから健康保険組合に移った等)は上限額は通算されません。転職等があっても保険者が同じであれば通算します。
副業、兼業等で同時に2つ以上の事業所からボーナスが支給される場合の処理の仕方は給料(標準報酬月額)と同じです。詳しくはこちらのぺージのⅡ-2-(5)をご覧ください。
健康保険法第45条・第46条・第156条、同施行規則第27条・第条
厚生年金保険法第24条の4・第25条・第81条、同施行規則第19条の5
3.書類の提出
書類提出の手続きは以下のようになります。
(1)提出書類 健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届
(2)提出先 管轄年金事務所
(3)提出時期 賞与を支払った日の翌日から5日以内
(4)添付書類
・原則ありません。
・年度の累計額が573万円を超える時は、「健康保険 標準賞与額累計申出書」をボーナスの支払いのつど、提出します。
(5)その他
・同一の月内に2回以上支払うときは、最終の支払日以後5日以内に、そのすべてを一括した支払届を提出しても差支えありません。
・育児休業等による保険料免除期間や、退職等をして資格喪失月となった月に支払われた賞与(ともに保険料徴収の対象となりません)についても、賞与支払届を提出する必要があります。この場合の標準賞与額も年度の累計額に含まれます。
・70歳以上の労働者については、マイナンバーも記入します(本人確認も含みます)。
・新規適用届等を日本年金機構に提出する際に賞与支払予定月を登録したが、賞与を支給しなかった場合は、「健康保険・厚生年金保険 賞与不支給報告書」を提出します。
・登録されている賞与支払予定月に変更がある場合も、「健康保険・厚生年金保険 賞与不支給報告書」を提出します。
健康保険法第48条、同施行規則第27条
厚生年金保険法第27条、同施行規則第19条の5
※年4回以上支給されるものは、定時決定の際に月平均額を計算し、報酬月額に加えられます。