令和8年度の法改正
この投稿では令和8年度の法改正の概要をご紹介します。労働法や社会保険法は毎年改正が行われていますので、最新情報のキャッチアップにぜひご利用ください。なお、変更はこれ以外にも数多くあるため、ここでは主なもののみピックアップしています。
Ⅰ.改正内容の一覧
令和8年4月施行
・健康保険の被扶養者認定の収入要件見直し
・在職老齢年金の支給停止基準額引上げ
・男女間賃金差異の情報公表義務の対象拡大
・女性管理職比率の情報公表の義務化
・えるぼし認定制度の見直し
・離婚時の年金分割の請求期限の伸長
・子ども・子育て支援納付金の徴収開始
・高年齢労働者の労働災害防止措置(努力義務)
・治療と就業の両立を促進する措置(努力義務)
令和8年7月施行
・障害者雇用率の引上げ
令和8年10月施行
・カスタマーハラスメント対策義務化
・求職者等に対するセクハラ対策義務化
・短時間労働者の被用者保険加入支援措置
・国民年金第1号被保険者の育児期間の保険料免除
・プラチナえるぼし認定制度の見直し
Ⅱ.具体的な改正内容
ここからは、事業主や労働者にとって特に関わりの深いもの、影響の大きいものをピックアップしてお伝えいたします。ここで触れていないものにつきましても、ご不明点等があれば遠慮なくご連絡ください。
1.健康保険の被扶養者認定の収入要件見直し
健康保険の被扶養者認定に際し、算定対象となる被扶養者の収入の範囲が見直されます。
(1)現在
これまでは認定対象者の「過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みにより判定する」とされ、残業代(割増賃金)などを含むあらゆる収入が対象となっていました。
(2)改正後
改正後は、労働契約に明確な規定がなく、契約締結段階では見込むことが難しい収入(時間外労働時の割増賃金など)については、被扶養者の年間収入に含めないこととなります。
(3)目的
被扶養者認定の予見可能性を高めることで、労働者の働き控えを回避することが目的です。たとえば時間外労働をした時間数が想定以上になるなどして年間収入が基準額以上になった場合でも、その収入が社会通念上妥当な範囲に留まる場合には、これを理由に被扶養者として認定されない、もしくは取り消されるといったことはないことが示されました。労働者が安心して働ける環境が整えられるための法改正、と言えます。
2.障害者雇用率の引上げ
現在「障害者の雇用の促進等に関する法律」により、雇用労働者に占める障害者の割合について一定の率(法定雇用率)が定められています。この法定雇用率が変更となります。
(1)現在
現在は民間企業の法定雇用率は2.5%です。雇用労働者数が40人以上の事業主が対象となるという意味です。
(2)改正後
改正後は、民間企業の法定雇用率は2.7%となります。原則、雇用労働者数が37.5人以上の事業主は障害者を一人以上雇用しなければならなくなります。
3.国民年金第1号被保険者の育児期間の保険料免除
国民年金の第1号被保険者に関して、保険料制度が大きく変わります。
(1)現在
国民年金の第1号被保険者は、育児期間中でも保険料の免除はありません。
(2)改正後
国民年金の第1号被保険者は、育児期間中の保険料が免除されます。
(3)詳細
免除対象:父母いずれも対象です。就労しているかや、所得の有無は関係ありません。
免除期間:原則として子を養育することになった日から子が1歳になるまでの最大12か月間
(産前産後は従来から免除があり、実母でそれが適用されている場合は、産後の免除期間に引き続く9か月)
その他:「子ども・子育て支援納付金」はこの免除期間に伴う財源確保措置でもあります。
4.カスタマーハラスメント対策義務化
社会状況の変化や世間の要請に応え、従来は努力義務だったカスハラ対策が義務化されます。
(1)現在
義務は特にありません。
(2)改正後
カスハラ防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが、事業主の義務となります。具体的な措置内容は今後示される予定です。
(3)カスハラの定義
カスハラの定義は次の3つをすべて満たすものです。
①職場において行われる、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、
②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
③当該労働者の就業環境を害すること
5.求職者等に対するセクハラ対策義務化
カスハラ対策同様、従来は努力義務だった就活生を含む求職者等に対するセクハラ対策が義務化されます。
(1)現在
義務は特にありません。
(2)改正後
求職者等に対するセクハラ防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが、事業主の義務となります。具体的な措置内容は今後示される予定です。求職者への面接だけでなく、説明会やインターンシップなども対象です。
